【TAI’S EYE】
ANDREW WELLMAN
アンドリュー・ウェルマン
グッドウェイブに巡りあったような気持ちにさせてくれるアートたち

Portrait by Tasiuke Yokoyama
Text by Sae Yamane

語り手/横山泰介(よこやま・たいすけ)。日本のサーフィン黎明期より活躍するサーファーフォトグラファー。
その人の素を描き出すポートレート作品を中心に発表を続ける。@taiseye

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本紙で使用しなかったアザーカット。雰囲気のあるバリスタイルの家に彼のアートがよく似合う。



10年ほど前、バリに住むイタリア人の友人に、すごくいい作品をつくる奴がいるから見に行かないか?と誘われて、チャングーのバツボロンの近くの彼の家を訪ねた。オーストラリア人のアンドリューは、バリに20年近く住んでいる。塀で囲まれた古いバリスタイルの家には、小さな門を抜けると、前庭にはプルメリアや芭蕉の木が自由に育っていた。その家に入った途端になんとなくわかった。ちっちゃな石ころとか、花ひとつとか、そういうものすべてが彼の感性を表していた。たとえば人の家を訪ねたときに本棚を見て、どんな本が並んでいるかでその人のセンスがわかるように。
家の壁に書かれていた標語とか筆の置き方、キャンバスの並べ方。雑然としているようでじつはすごい計算されていて、僕の目にはアートに見えた。この人はどういう人なのかだいたい想像がつく。ギャラリーにもなっている、天井の高い広いリビングルームに入ると、シルクスクリーンの大きな絵がかけてある。やはり思った通り、期待に沿うようなすごいアートをつくってしまう人だった。でも笑えたのが、床にはロングボードのシェイプが描かれていて、「ここでノーズライドのイメージトレーニングをしてるんだ」とやってみせてくれたこと。彼の作品は心に響く、何か共鳴するものがある。それは“サーフィン”かもしれないけれど。


Andrew Wellman 『The Little Heroes』

洋芸術家にとって、自分のいる場所は必ずテーマになってくる。ゴーギャンがタヒチだったったように、アンドリューだったらバリなのかな。でもそこには波乗りが深く関係していると思う。シルクスクリーンの作品にレジンをかけて仕上げるのも、サーファーならではの発想だし。たぶん彼が前に住んでいたウブドゥと、今波乗りしながら住んでいるチャングーとは違うと思う。彼は「アートとサーフィンとソーシャルライフのグッドバランス」とチャングーでの暮らしを言うけれど、創作意欲を掻立てられるんだろう。ジャワ島のバツカラスにも、ビーチフロントに彼の家がある。そこのローカルサーファーの少年たちをテーマにした一連の作品『The Little Heroes』は、本人が「10年かかって、やっとこれだと思える作品をつくれたんだ」というだけに、訴えてくるようなインパクトがある。DEUSのオーナー、ダスティン・ハンフリーも早々に彼の作品を評価していて、バリの店のオープニングエキジビションでアンドリューの作品を展示した。以来、店にはいちばん目立つところに彼の作品が飾ってある。
アンドリューは、絵を描くこととサーフィンには同じ楽しみがあるという。「無心になって没頭できるからいいんだよね。でも考え過ぎると、サーフィンはワイプアウトだし、アートはアグリーになる。だから直感に従うことなんだ」と。

“TOO MUCH SURFING VERY GOOD”

これは、彼と彼の仲間たちの合い言葉。まったくその通りだね。



ANDREW WELTMANN instagram >> drewwellman66

※SURF MAGAZINE VOLUME.01より再構成し転載。

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