【TAI’S EYE】MASSA NAKAGAWA 中川聖久
サーフィンと大自然の中から学んだ感性で、花に命を吹き込み、アートとして昇華させる
Photo by Tai
Text by Sae Yamane
語り手/横山泰介(よこやま・たいすけ)。日本のサーフィン黎明期より活躍するサーファーフォトグラファー。その人の素を描き出すポートレート作品を中心に発表を続ける。@taiseye
MASSA NAKAGAWA『狐雲野鶴』(※空に漂うちぎれ雲。群れから離れ棲む一羽の鶴。俗世間を棄て、名利を超越して隠居する人のたとえ)
最初に会ってどのくらいたつのだろう。ただ、いつもMASSAの活動は気になっていたから、次々にいい仕事をしているのもチェックしていた。
世界のハイブランドのレセプションやオープニングパーティ、雑誌や広告、五つ星のパレスホテル東京のウェディングの装花演出など、MASSAの経歴はすでにメディアで語り尽くされているから、今更、僕が言うまでもないだろう。今回、フォトセッションという機会を通して、改めて彼の本質に触れることができた。
すでに何回となく手がけているミュージシャンのMisiaのステージでは「森を表現したかった」という彼。まさにそこにはうっそうとした森があった。自然環境保護に意識が高く、生物多様性を守る活動を森を通して行っているMisia、彼女ほどのビッグアーティストのステージを手がけるフラワーアーティストはMASSAしかいない。このふたりのコラボレーションはまったく当然の流れだったのかもしれない。樹を見ずして森は描けない。山を歩いたり、森を歩いたり、波に乗ったり。彼が見て来た世界があったからこそ、繊細でありながら、あのダイナミックな演出ができるのだと思う。自然の中に身を置く事の大切さがそこにある。
60年代のフラワーチルドレンだと勝手に思っている僕にとって、花はひとつのPEACEの象徴。花のもっている力を信じている。その花にさらなる命を吹き込んで、アートとして生き返らせる。MASSAが思い描いているアートは、いまこの時代の人々に、忘れられていた「自然」というものを伝える役割を果たしているのだろう。
MASSA NAKAGAWA
そんなMASSAが撮影のためにもってきてくれたのは、山帰来(サンキライ)。調べてみたら、この花言葉は「不屈の精神」なのだとか。日本の花の業界では、まだ誰も通ったことのない道を歩み、オリジナルを生み出している彼が、世に出て、先頭に立つにはそれ相当の努力をしてきたに違いない、でも一所懸命にやり抜く、不屈の精神が彼をここまで花開かせたのだろう。
「でも、波乗りがなかったら、ここまでやって来られなかったです」って、第一線で活躍するアーティストが本音を言ってくれると、僕としてはやっぱり嬉しいんだよね。
(※SURF MAGAZINE VOLUME.03より再構成し転載。)
なかがわ・まさひさ/フラワーアティスト。既成の概念にとらわれない装花演出や空間デザインが国内外で高く評価。「Flower アート&デザイン協会」会長。パレスホテル東京でのWEDDING装花ブランド「MUKU」デザイン監修、同エクゼクティブアートディレクター。
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