天性のコンペティター・
仲村拓久未インタビュー
仲村拓久未のアグレッシブな試合は観る者を興奮させる。
全身でぶつかっていく彼の闘争心が伝わってくるからだ。
試合でしか感じられない興奮。勝った時にのみ得られる快感。
コンペティションの世界で生きる拓久未に、その魅力を語ってもらった。
Photo by Kenyu @kenyutakahashi
Edit by Mitsuto Matsunaga
『SURF MAGAZINE Vol.02 STOKED』より加筆修正を加え転載。
今年1月にハンティントンであったシューシティプロで、元CT選手のブレッド・シンプソンと戦ったんです。ブレットとセミファイナルのマンオンマンで自分がどれだけできるのか楽しみでした。その前にラウンド4では自分がブレットに勝ち、ラウンド5では自分がブレットに負けていたんです。目の前で見るとめちゃくちゃ上手かったんで、逆に、自分ができることをするしかないって開き直れました。純粋な意味での挑戦という感じで。結果的に勝つことができて本当に嬉しかったですね。
今度はプライムイベントで勝ち残ってもう一度彼と対戦したい。
僕は昔から試合がすごい好きで、やっていてい楽しいし自分に合ってるんだと思います。上手い選手と対戦した時に、集中して力を出し切りあうのは気持ちいいですね。フリーサーフももちろん好きですけど、試合には試合の面白さがあって、自分にとっては集中して楽しんでいることがストークだと思うんです。
負けが続くと怖くなることもあるけど、そういう時は目一杯サーフィンすることで自分のサーフィンを調整して、「これでいけるだろう」と感じられるように持っていきます。同時に気持ちを高めていって、「自分にはできる」って信じるんです。
子供の頃からとにかく負けず嫌いなんですよ。だから、海外の試合に出て負けが続いたりすると結構悔しいですよ。国内では勝つことのほうが多かったんですけど、世界の層は厚くてすごく上手いサーファーばっかり。だからこそ「この舞台で勝ちたい」って思うんです。
試合でのアグレッシブなサーフィンとともに、スタイル溢れるフリーサーフィンも拓久未の魅力
自分のヒートに向けて集中力を上げていくために、5~6ヒート前から波を見て、音楽を聞きながら、あのセクションで何をしようかとか考えて臨んでますね。考えるのは試合のことだけ。他のことは全く考えてないです。
自分が勝ってる時って冷静に考えられて、気持ちもいい感じで落ち着いてます。考えすぎるとミスが多くなるっていう自分の性格っていうのも分かってるんですよ。バランスが難しいですね。最近はコーチとして(佐藤)和也くんに付いてもらうことが多くて、試合前に「どこがいいか」「どう攻めていくか」と一緒にイメージしています。ハンティントンの時は、また別のコーチの方にも付いてもらっていい成績が残せたので、コーチが一緒にいることでいい試合運びができると実感しましたね。
2015年にJPSAグランドチャンピオンになれたのは自分の中ですごい大きかったです。それによって家族やスポンサーなどたくさんの人たちに喜んでもらえたし、世界に挑戦するきっかけができた。あれはストークしましたね。でも、同じ年に(大原)洋人が世界で勝つようになって、素直に喜べないところはありました。グランドチャンピオンを獲れてほっととはしたけど、成績としては洋人に追いついてないから、今はとにかくやれることをやって、今年、来年はかましていきたいなって。競技の世界はシビアなんで、勝っていなければ意味がない。世界への挑戦は、2~3年で結果を出せなければ次がないですから。どうしても勝たなきゃいけないんです。
そんなプレッシャーの中で、自分のサーフィンに集中して、勝つことができたら最高ですよ。素直にすごくストークする。その瞬間にしか味わえない感覚。あの感じは、勝ったことのある人にしかわからないです(笑)。その日1日、すごくいい気分で入られますよ(笑)。だから次の試合も勝ちたい。勝ったらまたあの感覚に出会えますからね。
ナカムラタクミ/1996年4月8日生まれ。奈良県出身。2015年にJPSAを制し、その後世界へ。今年1月QS1000 シューシティープロで準優勝を果たす。天性の試合感とアグレッシブなサーフィンが持ち味。@takuminakamura