五十嵐ツトムのCTツアー観戦記 |2016年パイプラインマスターズ・セミファイナル回想編<エピソード2>

五十嵐カノアの父ツトムが、試合に帯同して父親目線で観たリアルで愛のあるツアーレポート。
今回は名勝負となった2016年パイプラインマスターズ・セミファイナルでの五十嵐カノア対キング・ケリースレーターのストーリーを回想する。
Text & Photo by TOM IGARASHI & WAX SUZUKI
Movie by WSL | Supported by Namidensetsu

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Banzai Pipeline, Oahu, Hawaii. 2016 –


Kelly Slater vs. Kanoa Igarashi – Billabong Pipe Masters 2016 Semifinals @WSL



セミファイナル試合開始。
ルーキーカノア(19)vsキング神ケリーの勝負だ。海外からのアクセスが殺到しWSLのサイトはパンク寸前。
カノアはホーンと同時にケリーの右に回り込みバックドアを狙う位置にうまく体をフローさせた。ケリーの隙を見てセットにポジションを合わせ、いい波を掴み深い位置のチューブメイク(6.67)いい出だしだ。
すかさずケリーも同じサイズの波をうまくアプローチ。チューブとビッグターンのコンビネーション(8.1)!流石。
俺はもうこの時点ではどうでもいいよーって感じでした。しかし周りに応援に来てくれていた仲間が必死にカノアにエールを送ってくれてた。感謝!
隣には日本のアイドルグループを作り出している巨大会社の大社長もいてパワーいただきました。









ファイナルの朝、日本から沢山の取材が。忙しいカノアの代わりにキアヌがメディアに対応。
日本のスポーツニュースに初めてサーフィンがメインコーナーを埋め尽くすことになった。












試合はシーソーゲーム。少しケリー有利のまま残り時間4分だ。
このセミファイナルを勝つためにカノアが必要な点数は(8.33)プライオリティーはカノアが持っている。
残り時間2分43秒。ビーチから歓声が響いた。セットが沖に見えた。
「カノア!カノア!カノア!カノア!」カノアコールでビーチが湧いた。

セットが来た。サイズも有る。6本くらい入ってる。徐々に近ずくセット。プライオリティーを持たないケリーは手前で波に乗った。
ビーチには悲鳴に近いくらいのカノアコールが。カノアの前に1本目のセットが届く。ビーチでゴーカノアーGOー!!ってみんなが叫ぶ!
が、1本目のセットにカノアは手を出さなかった。2本目のセット。やはり歓声がGO!go!GO!板の向きを変えてこれに行くのかと思いきや、行かない。ビーチからオーっと声が。

残り時間50秒。
ケリーはインサイドでカノアがこの6本のセットとうちどの波を選ぶのかじっくりと見ている様子。3本目のセットも見送り4本目。残り時間40秒。ビーチの歓声もMAXです。
カノアは板をビーチに向け深く手を水面に潜らせ力強くパドル、これに決めた!
後から聞いた話によるとケリーもカノアの選んだ波にカノアを見てうなずいたって。「一瞬ケリーと目があって、いいぞその波だよカノア」って感じでうなずいたって。カノアが言ってました。
また幼い頃からカノアにパイプを教え込んでいた大先輩の姿がこの4本目のテイクオフの瞬間にカノアの目に入った。パイプハウスの右の端に1人で立っていて、カノアがこの波を選んだ瞬間に右手を親指を立ててグッドのサインを送ってくれてたって。
高々とグッドのサインを上げていたって。

テイクオフと同時にカノアの体は緑色の部屋にズッポリと奥深く入りこんだ。ここから抜け出せば「8.33」は絶対に出るなーってサイズも形も完璧な波です。
どーんという音と共にカノアはチューブから吹き出され見事にメイク! ケリーもカノアのスコアーが発表される前に自らインタビューブースに向かう。「8.33」が出た事をわかっていた。

そして。。。
「8.83」がアナウンスされた!カノアがパイプでケリーに勝った瞬間だった。






そして冒頭のビデオの再生回数は「1,590,624」 回!
2016年を振り返る。いわゆるルーキーイヤー。CTにクオリファイ。滑り止めにQSでのポイントをしっかりと稼がなくてはならないルーキー。
CTだけでルーキーが翌年のCTクオリファイを狙うのはちょっと厳しい。しかしカノアはCTでもQSでもクオリファイした。

まあとりあえずケリーさんとのパイプでのマンツーマンでのヒートは本当に良い経験になりました。ありがとうございましたケリー様。


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