五十嵐ツトムのCTツアー観戦記 |番外編 | SURF RANCH ファースト・ライド<エピソード2>
五十嵐カノアの父ツトムが、試合に帯同して父親目線で観たリアルで愛のあるツアーレポート。
五十嵐カノアが2016年17歳のときにケリー・スレーターの依頼で開発途上であったウェーブ・プール【SURF RANCH】において、記念すべきファーストライドでのエピソード。
<Text & Photo by TOM IGARASHI><Supported by NAMIDENSETSU>
Lemoore, California – 04.30.2016
極秘に行われたカリフォルニアのウェーブプール【SURF RANCH】開発段階でのファーストライド映像
五十嵐カノアファーストライドでのチューブライディング
2018年に行われた【SURF RANCH PRO】ファイナルデイでのチューブライディング・ショット。その上の開発段階の波と同じアングルからのショットだが、完成後は波がよりクリーンなのがわかる。
プールのインサイドって言うのかなんと言うのか….波のフィニッシュをする辺りには、50人以上のスタッフがカノアの初ライドを目を凝らして双眼鏡を使い…..
後から聞いた話なんですが、なんでもケリーさん(ケリー・スレーター)はファーストライドをうまくライディングする事が出来なかったそうなんですよ。一方カノアはただの軽い練習(テストライド)のつもりで来ていけど、実はこのテストライドは10代の若いサーファーがこのウェーブプールでどんなサーフィンが出来るのかをメディアを始め、開発者や研究者にお披露目をする非常に大切な日だったんです……
朝5:00前の暗い中、はるばるロスアンゼルスから来た人が多かったと思います。まっ、とりあえずもう一度この上にリンクしてある<YouTube>でカノアのファーストライドをじっくりと見直してみてください。何しろ一本一本人工的に作られる波….失敗はなんとも言えない感じだろうね。
ここで豆知識….波質なんですが一番イイ波は朝イチのまだプールの水が全く動いていない状況で….水面やプール内の水が止まっている中で起こす波が極上波!
面ツル面ツル、鏡のようなツルツル波….その極上な波をカノアの為に用意してくれて….テレビ局からWSLのメディア班が歴史的なライディングを収めようと集まって来ていました。
ケリーさんは自分専用のエアストリームの中からカノアのファースライドを見守っていた。
現在ではCTの試合<サーフランチ・プロ>として実際に試合でも使われるようになったこのプール….このファーストライドの時はまだ観客席もなく。当時は一本の波を起こした後にバックウォッシュが収まるまでに20分以上かかっていました。
今ではプールのサイドに水を逃すシステムがつけられ、10分ほどでバックウォッシュが無くなるようになっています。…..この張り詰めた空気の中でカノアは完璧な位置からのテイクオフ、人生初の波をじっくりと感じながらのボトムターンから……最初に巻き起こるファースト・セクションの人工チューブに体を埋める。早い早い….波も早いけどカノアも早い….
良いポジションに身体を移し完璧なチューブをメイク……ここで一息。
とりあえずテイクオフ直後のワイプアウトは免れた(笑)。実際、ある程度の腕があるサーファーでもこのプールの波はテイクオフからすぐにワイプアウト、ってことが多いんですよ。このプールをもし借りるとしたら数百万円って話…..一本の波がいくら???、ワイプアウトでいくら????とか。究極のスペシャリストが作った波を無駄には出来ない….とかね。とりあえずカノアくん一発目のチューブを抜けた直後に…..第2の難関ほれほれセクションへ….うまいボードのコントロールで軽いエアー・ドロップ、ここでワイプアウトギリギリからのチューブイン。
全ての難関を切り抜けて、最後のエアー・セクションでは当時の地形はホレすぎていてなかなかうまくエアーを決めるのは難しく、ここはカノアも軽く身をかわしフィニッシュ…..10代の若いサーファー・カノアの人生初のプール・ライディングを観ていたプールサイドの観客から割れんばかりの歓声が巻き起こった。
多分このプールに研究や開発に携わった方達も観ていたのでしょう…..涙を流していた方もいました。感動的なライディングでした。
とっ、まぁこんな感じでした。
まだまだ色々なカリフォルニア….いや世界での楽しい経験が沢山あります。そんなハプニング・エピソードをご紹介させていただきます。これからもよろしくお願いします。