ロンボク島デザートポイント
パパギラ=クリスチャン・フレッチャーからの招待<Part_1>

80年代から現在まで、さまざまなシーンでサーフィンカルチャーに重要な影響を与えてきたクリスチャン・フレッチャー。デザートポイントへの旅を共にし、その外面の強烈なインパクトに隠された彼の一面に触れた。

Photo by STEVE THRAILKILL
Text by YOHEY YOKOI

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<Part_1>

デザートポイントでパパギラと呼ばれる刺青だらけの男




クリスチャン・フレッチャー。その名前は1700年代のイギリス航海史において著名な船乗りであり、人望が厚く、勇気があり、バウンティ号反乱の首謀者でもある。
サーフカルチャーにおける同名は、歴史におけるヒーローのようにあれと、父ハービー・フレッチャーにより命名されたクリスチャン・フレッチャーがその名前から想起する人物であろう。
17世紀の歴史上人物と同様に、クリスチャンは各時代において、時には反逆者として、あるいは先駆者として、そして時にはヒーローとして、80年代から現在に至るまでサーフカルチャーを牽引してきた。








クリスチャンとフレッチャー・ファミリーの歴史を深く掘り下げるのは、数百ページの本でも足りないし、現在進行形である彼らの軌跡を語っても只の通過点にしかならない。但し近年、クリスチャンを含めフレッチャー・ファミリーと行動をする機会に恵まれたこともあり、彼らのたびに誘われ、断片的ではあるがクリスチャンの人物像を垣間見ることができた。





インドネシア、ロンボク島の果てにあるデザートポイントは、アフリカ、ナミビアにあるドンキーベイが近年発見されるまでは、世界一の距離を誇る高速レフトサーフスポットであった。
デザートポイントは70年代にはボートトリップでのディストネーションとしは発見されていたのだが、バリ島の隣ロンボク島という好立地にも関わらず、サーフキャンプ自体は観光化されずプリミティブかつシンプルなライフスタイルのローカルビレッジとして保たれている。もちろん一度波が上がれば、世界中からプロ、アングラ、ハードコア、トラベル、ビッグウェイブといったありとあらゆるジャンルのサーファーが自分の力量を試しに訪れるのだが、目線を遠く持って走るレフトの高速バレルの下に待ち受けるギラギラしたインサイドリーフのシャープさが観光化を避けているのであろう。






クリスチャンはインドネシアではイカれた猿の意味を持つインドネシア語、パパギラ(Papagila)というニックネームで呼ばれている。以前インドネシアに住んでいた時に飼っていた猿とその縦横無尽な生き様から名付けられたそうだ。
パパギラはこのデザートポイントではどんな訪問者よりも、現地に住む人々と打ち解けている。まるで家族のように……。子供達は常にパパギラにまとわりつき、彼をからかい、親たちは娘を嫁にしてやるからずっとここに住んで家畜の世話とバンガローを経営しろと冗談交じりで談笑し、パパギラ自身もかなりしっかりとした現地の言葉で得意の皮肉を言う。
朝から晩まで、彼らの会話に笑いが絶えることなく、きっと同じ話を何度もしているのだが、パパギラがいるバンガローは、目の前に広がるシャローリーフに上に走るハードコアサーフとは真逆の時間が流れている。パパギラがここまでこの地に受け入れらる理由。それは明快である。

<Part_2>へ続く …


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