ロンボク島デザートポイント
パパギラ=クリスチャン・フレッチャーからの招待<Part_2>

80年代から現在まで、さまざまなシーンでサーフィンカルチャーに重要な影響を与えてきたクリスチャン・フレッチャー。デザートポイントへの旅を共にし、その外面の強烈なインパクトに隠された彼の一面に触れた。

Photo by STEVE THRAILKILL
Text by YOHEY YOKOI

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<Part_2>

パパギラが村人に慕われる理由




ヘンドラは、今年中学生になる地元でもかなりサーフィンの上手な少年だ。英語も堪能で、学校の成績もかなり良いらしい。彼の左足指の多くは欠損しているが、日常生活やサーフィンに支障をきたす程ではない。ヘンドラは6歳の時に足をバイクの事故により怪我をした。そして近隣に病院もなくお世辞にも裕福といえないヘンドラの家族が、彼の命を守るために出来る選択は足の切断以外になかった。その時そこに居合わせたパパギラは自分の手持ちのお金を全て彼らに渡し、そして近隣のバンガローに滞在する全てのサーファー達を一人ひとり訪ね、手術代を集めた。それによってヘンドラは足を切断することなく治療を受け、パパギラと行動することにより英語も覚え、未来への可能性を繋げてくれた。そして、少し年上の親友となったのだ。








パパギラは彼の家族にもバンガロー建てる費用を渡し、生活を出来る援助までした。パパギラいわく施設はマイナス5スターホテルだが自分にとっては最高の居心地だと、ここでもシニカルな発言でキャラクターに合わない聖人扱いされそうなストーリーに煙に巻く。 
この地にはメディアから受ける一般的な印象とは全く違うパパギラ、いやクリスチャン・フレッチャーの人物像がここにはあった。もちろん、彼のそんな話はここだけでなく、彼を知る人物や近い友人はクリスチャンが持つ本当の人間性を十分に理解している、だからこそ現役を退いた今でも一線で活躍するサーフスターなのであろうと改めて納得した。





半世紀近く前に父ハービーが名付けた名前クリスチャンその名前に相応しく、半逆的なイメージとは裏腹に実は人情に厚く義理堅い。パパギラことクリスチャン・フレッチッャーはまさしく現代の、いや本当のクリスチャン・フレッチャーではなかろうか? ロンボク島の舗装されていない乾いた道を、土煙を巻き上げてバイクで駆け抜けるクリスチャンをぼんやり眺めながら、ふとそんなことを考えた。


*<Part_1>はこちらから …


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